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ソニー発「REON POCKET」はなぜ生まれた? 大企業で新規事業を開発するメリットとデメリット

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 ウェアラブルサーモデバイス「REON POCKET(レオン ポケット)」。2020年7月の一般販売スタートから、バージョンアップを重ねるたび品薄状態を引き起こすほど、酷暑が続く日本でヒットしている。本稿では、同プロダクトを開発したソニーサーモテクノロジーの伊藤健二氏にインタビュー。ソニー時代に事業を着想したきっかけのほか、成功要因、スピンオフの理由、大企業で新規事業を開発するメリット/デメリットなどを語ってもらった。

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エンジニアからキャリアをスタート

──まずは伊藤さんの自己紹介をお願いします。

 元々はソニーのエンジニアとしてカメラの商品設計に携わっていました。筐体の設計や部品のレイアウトなどが主な役割です。

ソニーサーモテクノロジー 代表取締役 伊藤健二氏
ソニーサーモテクノロジー 代表取締役 伊藤健二氏

 カメラの設計を通じて、商品の企画・設計・開発・量産・品質保証までをひととおり学んだ後、新規事業を開発する部署への異動が決まりました。そこでモノを売ったりニーズを把握したりするマーケティングの知識を補完し、エンドツーエンドの事業開発を体得した流れです。

 自身で事業を立ち上げたい思いは以前からあったため、準備が整った段階でアイデアを具現化しました。2020年の事業化を経て、2023年にスピンオフして今に至ります。

──ソニーサーモテクノロジーの事業について教えてください。

 ウェアラブルサーモデバイスの「REON POCKET」を開発・販売しています。REON POCKETは、首元に直接装着することで接触部の体表面を冷やしたり温めたりすることができるデバイスです。夏も冬も季節の変わり目も、一年を通して使えます。

【左】REON POCKET 5【右】REON POCKET PRO
【左】REON POCKET 5【右】REON POCKET PRO

──一般的な冷却グッズと何が違うのでしょうか?

 最大の特徴は、衣服の中に隠れる点です。一般的な装置の場合、空気を循環させながら冷却点を維持します。空気の量が少ない衣服の中に入れると、冷却を維持する力が下がってしまうため、類似商品は外から見えるものが多いです。一方REON POCKETは、小型大風量ファンやヒートシンクを専用設計することで、衣服の中でも冷却性能を維持します。ビジネスシーンで活用しやすい点が特徴です。

着想源はカメラの冷却システム

──REON POCKETを着想した経緯が知りたいです。

 エンジニア時代に開発していたある技術が着想源です。カメラのイメージセンサーを冷やすことによって、動画の画質を改善する技術を個人的に検討していました。2012年当時は実用化に至らなかったものの「この技術はいつか何かに使えるかもしれない」と考えてアイデアをストックしていたんです。

 5年後の2017年、出張で訪れた上海があまりにも暑くて「カメラの冷却システムをウェアラブルのクーラーに転用する」というアイデアを思いつきました。2012年よりも部品の小型軽量化が進み、バッテリーやセンサーの性能も上がっていたため、身に着けて使えるサイズの製品を作れるのではないかと考えたんです。

──事業化までの道のりをお聞かせください。

 ソニーの新規事業創出プログラム(現:Sony Acceleration Platform)に応募しました。2019年冬の審査を経て、同年4月より事業の本格検討が始まったと記憶しています。

 最も暑くなる7月にクラウドファンディングサイトでプロジェクトを掲載し、同時期に開催される「猛暑対策展」に出展してプロダクトのPRを図りました。目新しさから数多くのメディアに取り上げていただき、クラウドファンディングの支援額が伸長した結果、6,600万円に設定していたゴールを達成して事業化が決定しました。

──プロダクトの売れ行きはいかがでしょうか?

 REON POCKETのブランドでセンシングタグやアクセサリーも販売しているため、単純な販売台数をお出しするのは難しいですが、売れ行きは好調です。「ソニーの中ではまだ大きくないものの、そこまで小さくもない事業規模」と言ったところでしょうか。販路はオンラインと店頭の2種あり、オンラインの割合が大きいです。

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屋外作業者を対象ユーザーにしなかった理由

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この記事の著者

渡辺 佳奈(ワタナベ カナ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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